経緯
私が大好きな『式姫Project』というIPがあります。
https://www.shikihime-project.com/
いわゆるネット・スマホゲームを中心に展開していたのですが、全てのゲームがサービス終了の憂き目を見てしまい、しばらく経っています。
(新作は鋭意製作中みたいです! この機会にフォローをお願いします)
https://www.shikihime-project.com/nextworld_prj
そんな界隈で、みんなで式姫と遊べるようなTRPGを制作しています。
前回の記事ではα版を完成させるために行った、仮の意思決定がとても重要だったということを書きました。
紆余曲折あって、TRPGはすでにルールFIXし、ルールブックの作成に入れています。今回の記事ではその「仮決定」の毒と、テストプレイからのフィードバック収集についてのノウハウを書いていこうと思います。
ゲームに遊ばされる状態は最悪の体験
前回一次FIXしたα版のルールには、大きく分けて二つの「盛り込みたい要素」が欠けていました。
- スキルシステム
- 敵のエイムシステム
式姫Projectのデジタルゲームでは、敵のエイムは「敵視」という概念で管理されていました。簡単に言うと、一番大きなダメージを出しているキャラクターを狙う、というルールです。
この敵視システムの導入は、かなり重要度の高かったことでした。式姫達が持っている役割の一つに「刀」というものがあります。他のゲームでいうところのタンク役ですね。「刀」が敵視を稼ぐためのスキルで敵視と攻撃を集めている間に、ほかのキャラクターが火力や回復を押し込む。式姫Project、とくに『かくりよの門』はそういうゲームだったのです。
もともと、敵視を実装するにあたっては、「数字の計算と判定が増えてGMの負担が上がる」という問題が見えていました。キャラクター別に、敵に与えたダメージを集計する必要があるためです。
それは実際に起こりました。テストGMに「現状のシステムではこれ以上テストプレイしたくない」と言わせしめるほど、敵視やそれにまつわる数字たちは複雑にメンバーのモチベーションをからめとっていきました。
ユーザーがやりたいのは数値管理ではなく、式姫と遊ぶことでした。この大前提を、ここにきて失う意思決定をしかけていたのです。
メカニクスからではなく「作りたい体験」から考える
敵視システムにまつわる問題点は、「スタート地点を敵視再現に置く」ことから始めたのが問題でした。敵視がなければ刀が活躍できない、という意見もあり、一定の納得感があったのでそれを柱に据えたのが初期でした。
しかし、敵視が生み出す体験は、「敵視を集計して悦に入る」ことではありません。あくまでも「刀がタンクとしての役割を持てる」ことにあります。ここに解決のカギがありました。
刀が活躍するためのメカニクスは、「ある攻撃を誰かの代わりに受ける」ことに抽象化できます。つまり、「誰かをかばう」ルールが実装できれば十分にその体験を作ることができます。
さっそく「かばう」システムを取り入れた版をテストプレイに持ち込むと、大変好評だったのを覚えています。懸念だった刀式姫ガチ勢からも、かばうシステムは好評でした。なぜなら刀の役割が、数値によって受動的に攻撃を受けるのではなく、「自らの意思で味方を守る」ヒロイックな行動に変化したからです。
その後かばえる回数や、じゃあ敵はどうやってターゲットしてくるんだ……とか言ったこまごました直しはありました。しかし最後に残った大敵である、「ゲームに遊ばされる」というもっとも悪い体験は、「どう遊ぶか」という具体の話ではなく、「どんなふうに遊ばれたいか」という一段抽象化した、目的を考えることで解決したのです。
この時に、上記の観点をもとに、敵視システムのほかにも様々な「ユーザーがコントロールできない」要素をオミットしました。遊ぶのは人間なのがTRPGです。その原則に立ち返りました。
スキル調整は魔境
さて、本記事執筆時点で「ゲームシステム」はほぼFIXしています。
しかし残念ながら、「スキル内容」については実はまだ調整中となっています。
一番大きな理由は、実は先述の敵視システム廃止でした。敵視用のスキルが軒並み不要になったり、敵視の観点から弱めに設定していたスキルが弱すぎたり……といった具合です。
もし皆さんがTRPGを作ることがあれば、ぜひスキルは一番最後に決めてください。前工程の影響をとても大きく受けるので、ルールFIXしてから決め始めても遅くないと思います。
制作状況について
上の方でも述べた通り、現在はルールブック・パラメータシートなどのコンポーネント制作に移っています。並行してスキルの調整を行っています。
次回の記事ではコンポーネント制作についてやったこと、困ったことを書いていこうと思います。
それでは、今日はこの辺りで。
引き続きC103をお楽しみに。