完成して頒布するまで不定期に続きます。
今回は、経緯とゲーム作りで指針としていることについて話します。
制作開始の経緯
私が大好きな『式姫Project』というIPがあります。
https://www.shikihime-project.com/
いわゆるネット・スマホゲームを中心に展開していたのですが、全てのゲームがサービス終了の憂き目を見てしまい、しばらく経っています。
(新作は鋭意製作中みたいです! この機会にフォローをお願いします)
https://www.shikihime-project.com/nextworld_prj
そんな界隈ですが、創作活動は活発に行われています。そんな界隈だから、かもしれません。供給を求めて自給自足の日々。
「TRPGを作ろう」と発議されたのも、その流れからだったにちがいないと思っています。
公式のゲームがくれた式姫との物語体験を、自分たちでも作れるようにしよう。
そう言う思いで始まったものと認識しています。
つまり今から話すプロジェクトは、あくまでもファン活動の一環、つまり同人活動であるということを最初に断っておきます。
そんな『式姫TRPG』の同人制作で、旗振り役として色々やっていることを綴っていきます。
備忘録と、これからTRPGを作りたいと思うかもしれない人たちの助けになれば幸いです。
ゲーム作りで指針としていること
ゲームは「プレイヤーのためのもの」
ゲームは誰のためのものでしょうか?
問うまでもなく、「プレイヤーのため」と答えが返ってくるものと信じています。
ゲームに限らず全てのエンタメコンテンツは、それを受け止めた人にどのような体験を与えたか、が全てです。
私がずっとやっている小説でもそうです。書いただけでは小説ではない。それが人の目に触れ、読まれ、感情を動かして初めて小説と呼べると考えています。
そうであれば、TRPGというゲームもまた、全ての指向性が「どのように面白いプレイヤー体験を作れるか」に帰着するということを納得いただけるかと思います。
制作会議のキックオフから3回ほど、私はこれを周知徹底するためにかなりの時間を割き、心と言葉を尽くしました。
この「プレイヤーのため」という観点がブレてしまうと、チームの歩みもバラバラになりますし、出来上がったものも「プレイヤーが面白くない」者になってしまうからです。
このプロジェクトも、開始時点ではありがちな失敗に陥りそうになっていました。
- システムに遊ばされるゲーム
- シナリオを追体験するだけのゲーム
システムも、シナリオも、もちろん体験を作るためには重要です。ただし、それらそれぞれが全く別の方向を向いて強化されてしまうと、体験を提供する媒体として破綻してしまいます。
- プレイヤーにどのような体験をして欲しいか?
一番大事なのはこの軸がブレないことです。これをこのプロジェクトでは「コンセプト」と呼ぶことにしました。
結果、以下をコンセプトとして合意した形です。
- 『式姫を知らなくても、プレイヤーたちも式姫たちと一緒に、冒険を通じて成長 をして、式姫を好きになる ゲーム』
- 全ての収束する先は、PLとGMのために。
なんだか当たり前ばかり言っているように見えますが、これを共通認識として全員が持つために合計で4、5時間かかりました。
同好の士とものを作る時ですら、これだけの認識のずれが発生するのだということを私も学んだ格好です。
(これまでのゲームはほぼ全て個人制作でした)
「それって誰にとって面白い?」を常に問い続ける。
上記のコンセプトが決まると、あらゆるアイデアに対してそれを評価する軸が出来上がります。
つまり、「それってコンセプトから外れてない?」ということです。
今回のゲーム制作で言うと、コンセプトを作成することで、今のところ以下のことを抑制できたのではないかと思っています。
- 複雑すぎるパラメータ定義
- システムに縛られて式姫体験が疎かになること
- 議論の停滞
逆に、以下のことをより早く、強く推進できたのではないかと思います。
- 式姫の存在を感じるための体験設計
- 平易なシステム設計
- 発言しやすい空気の醸成
これは、制作陣を含めた「プレイヤーにとって面白いとはなんだろう?」をコンセプトによって可視化した結果に相違ありません。
「自分が面白いと思う」は確かに重要ですが、一歩引いて「これって他の誰かも面白いかな?」と言う視点を持つことで、より洗練された体験を提供することができます。
「言葉」を大事にする
システムを決める際に、とりあえず仮置きの言葉を置いてしまいがちですが、これは危険な傾向です。
言葉は、力を持っています。仮置きした言葉のイメージに、その項目に対する考え方が引っ張られてしまい、議論や設計が歪んでしまうと言うことを意味します。
「絆ポイント」と言う具体例を挙げて説明します。
当初の想定ではPLの分身である「主人公」と「式姫」の間にある関係性の強さを示すための値だったため、この名称は適切でした。
しかし議論の中で、「絆ポイント」は 「他のPL」「他のPLの式姫」に対する関係性をも強化するために使えるようになりました。
こうなってくると「絆」と言う言葉は適切ではありません。実際に議論で上がったのは、「式姫との関係値」で「他PLとの関係値」が左右されるのは直感的に・フレーバーとしておかしいと言うことです。
この違和感を一蹴してしまうことは簡単ですし、そうしてしまうこともできました。しかし原則に立ち返りましょう。「プレイヤーがどう思うか?」
制作陣と言う一番システムを理解している人間が引っ掛かりを覚えることは、必ず一般のプレイヤーも違和感を覚えます。違和感はゲーム体験を、わずかずつ、しかし確実に下げる要因です。言葉を少し変えるだけでそれを解決できるならば、手を抜くべきでありません。
この議論では、「絆ポイント」と言う名称を「交流ポイント」に変更しました。
これにより、以下の効果が得られました。
- 制作陣の納得
- 「交流」と言う幅広い言葉をとったことにより、もっとセッション中全員に開かれたシステムの発想が出た
- このポイントの減少条件と言うマイナス要因が、言葉の変化によって必然性を失い削除できた
諸説ありますが、少なくとも議論の場においては、私たちは言葉で物事を認識します。言葉は大事です。大事にしましょう。
制作状況
そんなわけで認識合わせをガッツリしながら進行しているので、少々進みは遅めです。
5月にはテストプレイ、とか予定していましたがなかなか遅れそうな気配が出ています。
12月冬コミでの頒布を目標にしているため、スケジュール影響を見ながら会議を増やしたりとか、色々試行錯誤しながら進行しています。
早めにお披露目できるよう頑張ります。